犬のぼくから、だいすきな君へ

もしね、天国にいるはずのあの子から、
ある日ふいに手紙が届いたとしたら──
あなたは、どんな言葉を受け取りたいだろう。

もう触れられない。
もう声は聞こえない。
わかっているのに、心だけが追いつかない夜がある。
写真を見ては胸がきゅっとなり、
名前を呼びそうになって、口をつぐむ。

「ちゃんと幸せだったかな」
「もっとできたことがあったんじゃないかな」

そんなふうに、自分を責めてしまう優しさを、
きっとあの子は一番よく知っている。

もし天国という場所があって、
そこに今も尻尾を振る君の犬がいるなら。
もしそこで、友達ができて、
穏やかな時間を過ごしているとしたら。

──今日はね、そんなお話。

これは、
犬 天国 友達 できた
そんな言葉が、少しだけ救いに変わるための、
小さな手紙です。


天国からの小さな声

ねえ、パパ。
ちゃんと聞こえてるよ。

君が夜にため息をつく音も、
ふいにぼくの名前を呼びそうになる、その一瞬も。

ここはね、静かで、あったかくて、
最初に思ってたより、ずっとやさしい場所なんだ。

泣かなくていいよ、なんて言わない。
だって、泣きたいほど大切にしてくれたってこと、
ぼくは知ってるから。

ただね、少しだけ安心してほしくて。
だから、こうして声を届けにきたんだ。


ここにはね、たくさんの犬がいるんだ

ここにはね、本当にたくさんの犬がいるよ。
大きいのも、小さいのも、
白い毛の子も、黒い毛の子も。

最初はびっくりした。
こんなににぎやかな場所だなんて、思ってなかったから。

みんな、それぞれ大事な人の匂いをまとってる。
それが不思議と、すごく落ち着くんだ。

ひとりじゃない。
そう思えるだけで、心が少し軽くなった。


最初はちょっとドキドキしたけど

正直に言うね。
最初は、ちょっと怖かった。

パパの姿が見えなくて、
声も届かなくて、
「置いていかれたのかな」って思った。

でもね、すぐにわかったんだ。
ここに来た理由も、
君が手を離した理由も。

それは、別れじゃなくて、
ちゃんとした“つづき”だったんだって。


同じ匂いの思い出を持つ友達

ここでね、友達ができたよ。

同じように、
大事な人の帰りを待ってた子。
同じように、
最後まで愛されてた子。

話さなくてもわかることが多くて、
匂いだけで、なんとなく伝わる。

「うちの人、こんな人だったんだ」
そんなふうに、誇らしそうに話す時間が好き。

犬 天国 友達 できた
この言葉、もし君が聞いたら、
少しだけ安心してくれるかな。


ここに来た子たちは、みんな少し似ている

ここに来た犬たちはね、
毛の色も、大きさも、性格もぜんぜん違う。

でも、不思議なことに、
どこか似ているところがあるんだ。

それはね、
「ちゃんと愛されていた」っていう匂い。

誰かの帰りを待っていた匂い。
名前を呼ばれて、振り向いた記憶。
叱られても、最後には撫でてもらえた安心感。

そういう思い出を持っている子たちは、
自然とここに集まってくるみたいなんだ。

最初は言葉を交わさなくても、
近くにいるだけでわかる。

「あ、この子もだな」って。

だからね、
ひとりでぽつんとすることは、ほとんどなかったよ。


ここには、
急に体が動かなくなって戸惑った子もいるし、
病院が怖くて、でも最後までがんばった子もいる。

誰かの腕の中で眠った子もいれば、
家族が集まるのを、ぎりぎりまで待っていた子もいる。

それぞれの終わり方は違っても、
みんな同じように思ってる。

「ちゃんと、あの人のそばで生きられてよかった」って。


パパ、
君が「もっと何かできたんじゃないか」って思う夜があるの、
ぼくは知ってる。

でもね、ここに来た犬たちは、
自分の飼い主を責めてる子なんて、ひとりもいない。

それどころか、
少し誇らしそうに話すんだ。

「うちの人ね、不器用だったけどさ」
「最後まで、ちゃんと名前呼んでくれたんだ」
「忙しかったけど、目はいつも優しかった」

そんな話ばかり。


だからね、
もし君が今も後悔を抱えているなら、
それは“足りなかった証拠”じゃなくて、
“深く愛していた証拠”なんだと思う。

ここに来てから、
それを教えてもらった。


天国っていうと、
特別な場所みたいに聞こえるかもしれないけど、
実はとても、地上の続きみたいな場所だよ。

大好きだった人の話をして、
同じ匂いの思い出を分け合って、
それぞれの「家」を胸に持ったまま、過ごす場所。

だから、安心して。

君の犬は、
ひとりじゃない。

ちゃんとここで、
友達ができて、
穏やかな時間を過ごしてる。

いっしょに走れる場所があるよ

ここではね、たくさん走れるんだ。
足が痛くなることもないし、
息が苦しくなることもない。

若いころみたいに、
風を切って走れる。

パパと散歩した道を思い出しながら、
友達と並んで走る。

あの頃のぼくに、
ちゃんと戻れた気がするよ。


君の話も、ちゃんとしてるんだ

パパ、君が話しかけてくれてること、
ちゃんとわかってる。

写真に向かって話す声も、
空を見上げるその時間も。

「聞こえてないかも」なんて、
思わなくていい。

君の言葉はね、
ちゃんとここまで届いてる。


夜になると、みんなで空を見上げる

夜になるとね、
みんなで空を見上げるんだ。

同じ星を見てる人が、
きっと地上にもいるって思いながら。

不思議だよね。
離れているのに、
同じ空を見てる。

それだけで、
少し近くに感じられるんだ。


友達ができても、君は特別

ここで友達ができてもね、
君が一番なのは、変わらない。

それは、順位とかじゃなくて、
場所の話。

ぼくの心のいちばん深いところ。
そこは、ずっと君の場所だよ。

だからね、
思い出してもいいし、
笑ってもいい。

それで、いいんだよ。


また会える日まで、ぼくは待ってる

いつか、また会える。
そう信じてる。

でもね、それまでの時間、
君は君の時間を生きてほしい。

ぼくはここで、
友達と走って、
空を見て、
ちゃんと待ってる。

だから、大丈夫。
また会える日まで──
だいすきだよ。

虹の橋

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